ヨーロッパ出張 2024 イタリア編(ミラノ)
< ヨーロッパ出張レポート② >
続いてはイタリア ミラノでのレポートをお届けいたします。
昨年に続き2度目のイタリア出張となりますが、今年はクレモナに向かう前にミラノ内の弦楽器工房を探索してきました。
楽器の製作学校もあるミラノでの新しい出会いや発見をご覧くださいませ。
[ イタリア編 in ミラノ ]
ミュンヘン空港からマルペンサ空港まで飛行機で約1時間。
今回も案の定、2時間ほど遅延しましたが、二回目の経験でそれほど驚きはなかったです。(笑)
そして、無事に電車にも乗ることができ夜10時頃、ミラノ中央駅に到着。
前回はあまり余裕がなくゆっくりと駅内を見ることができませんでしたが、改めて見るととても大きなスケールに圧倒されます。
ところどころに芸術性を感じる造形物などもあり、日本の駅の概念とは全く違った造りで感銘を受けました。
(ちなみにタイトルの写真はミラノ中央駅の外観です。工事中でしたが。)
この日は夜遅くでレストランなども閉まっており、そのままホテルで翌日に備えることに。
イタリア2日目。
ミラノはクレモナに行く道中には必ず踏み入る地なので、今回は少し立ち止まってミラノスクールの現況を確認してきました。
日本ではヴァイオリンといえば、「やっぱりクレモナ!」とのイメージを持たれている方も多いと思いますが、ここミラノでもれっきとした歴史や伝統があり、数々の凄腕の先人たちが輩出されてきた楽器作りが盛んな地です。(有名どころでいくと、モダンイタリアンを代表する工房の主L.Bisiachや、クレモナで有名なG.B.MorassiやF.Bissolottiの師に当たるF.Garimbertiなど)
この日はミラノの工房を数件訪問する予定を組んでおり、その内の2工房をご紹介させていただきます♪
まず初めに訪れたのは、”LiutaiLab”工房。
こちらはミラノの製作学校の卒業生たちがプロとして働いている工房でもあり、弦楽器の研究室。
ヴァイオリンやギターなどの弦楽器製作家が在籍しており、定期的に音響性や材木などについてのワークショップを開いたり意見交換を行っているとのこと。中でもDaniele Marni氏(写真:中央)は今年に入ってヴァイオリンで2つの国際製作コンクールで入賞を果たしている期待の若手製作家です。(”A.N.L.A.I”でブロンズメダル、”G.B.Guadanini”ではシルバーメダル。)実際に楽器を拝見しましたが、丁寧な作法で細かなところまで手が行き届いており、きっと彼の器用さがコンクールなどで評価を得ているのだろうと感じました。今後のさらなる活躍に注目&期待です!
続いては、”Gibertoni&Nalin”工房
ミラノの製作学校でも教鞭をとっているStefano Gibertoni氏(写真:ピースしている方)の工房。普段はValerio Nalin氏(写真:チェロを持ったメガネの方)と共同で製作を行っており、クオリティーの高いアンティークフィニッシュの楽器を製作しております。ヴァイオリンからチェロまで説明を聞きながら拝見させていただきましたが、途中新しい楽器であることを忘れてしまうほどアンティークの表現が素敵でした。
こちらの工房ではパーツに使われる材料にもこだわりを持っており、古典的な木材やサステナブルな材料を利用する取り組みも行っております。
Gibertoni氏曰く、「本工房のオリジナルパーツは17~18世紀でも使用されていたとされる古典的な木材を使用しており、環境にやさしく、楽器への音響性(抜け感など)へ機能的なアプローチを実現できる材料である」とのこと。少し難しいお話でしたが、またひとつ勉強させていただきました。
他にも、こちらの工房で働いている製作家の方々がおられ、日本人の若手製作家の吉原 啓介氏(写真:中央左)もそのひとり。
はじめは日本人がいることを知らず、恐る恐る工房内に入りましたが、お会いした瞬間驚きとよくわからない安心感が芽生えました。
つい最近、ヴァイオリン製作学校を卒業したばかりとのことですが、これからは研磨を積みながらプロとして懸命に尽力されていくとのこと。
鈴木弦楽器としてはこれからも応援していきたいです!
この日はトリエンナーレコンペの入賞者事前発表日でもあり、同工房のGianluca Coratza氏(写真:右端)が入賞している朗報がありました。
何の賞を取ったかは表彰式までは知らされず、工房内では「もしかしたらゴールド(1位)かもしれんな!(笑)」と和やかな雰囲気で賑わっておりました。
(結果は上位10位以内のファイナリスト賞。300もの作品も中から選ばれるとは本当にすごいことですよね。)
こんなアットホームな雰囲気でとても居心地がよかったです。
いままではミラノの製作家の楽器はあまり多く取り扱うことはありませんでしたが、今回工房を訪れ直接彼らの意見やコミュニケーションをとることで、その人たちが考えているニュアンスやこだわりに触れることができたのは収穫でした。
情報社会が進化していく中でも、地域や工房による価値観の違いを発見し、それが作品性にどう影響されているかを考えると、もっと色んな地域を訪れたい気持ちが強くなりました。
最後に、後日行ったクレモナムジカでも彼らがブースを出していたので記念に一枚。
(ブースの出展者は二人でしたが、たまたまお会いしていた製作家たちが一同に集まっておりました。早くも偶然の再会にびっくり。)
写真:左からGianluca Coratza氏、Dario Borroni氏、Daniele Banino氏、Daniele Marni氏、わたし。
いずれも技術はもうすでに申し分ない方たちですが、これからの彼らのさらなる活躍とその作品に要注目です!
次回はクレモナ編です!